R.H.Blyth ブライス研究 

川田基生 (文学博士・ブライス研究家)

1 序論 ブライスさんのライフ ..... . ... . ..... . ..... . Zen is poetry. Poetry is Zen.

 

 
禅は詩であり 詩は禅である。

禅はキリスト教、仏教の本質であり 普通の人々の日常生活の中にある。

                     ブライス

 

終戦直後 昭和天皇は処刑されず、皇室は存続。皇太子の教育係はイギリス人のブライス、アメリカ人のフレンド派クリスチャン(クエーカー:兵役拒否の教義)の婦人となった。

 

ブライスは記者団の質問「皇太子に何を教えているのですか?」という質問に

ライフを教えている」と答え 物議をかもした。

 

「英語を教えている」「英詩を教えている」のであれば騒ぎは起きなかったのであろう。質問の含意は「皇太子を洗脳してませんか?」であるから ライフは 原義:存在 訳語:生き方。 「皇太子に生き方を教えている」と訳せる発言であるから 論議をひき起こしたのである。

 

ここでは

ブライスの日常生活

皇太子に教えた 英詩の教科書を考察する。

 

"Zen is poetry. Poetry is Zen."

"Zen is the essence of Christianity, of Buddhism, of culture, of all that is good  daily life of ordinary people."         R.H.Blyth

Immediately after the end of the war, Emperor Showa was not executed, and the Imperial family continued. The Prince's tutor was Blyth.

Blyth responded to a reporter's question, "What are you teaching the Crown Prince?"

"I teach LIFE," he replied, to became a controversial situation

If he had been "teaching English" or "teaching English poetry," there would have been no commotion. Since the implication of the question is "Are you brainwashing the Crown Prince?" He caused controversy because his remark could translated as "teaching the crown prince how to live."

 

Here in this WEB page,

Blythe's LIFE,

Considering the textbook of English poetry taught to the Crown Prince.

2  ブライスの家族 友人 関係者  Blyth's family friends related people

            大学で講義するブライス

 



          ブライス夫人 富子さん

 

    ブライス家  左 次女 ナナさん  右 長女 春海さん

    次女ナナさん ブライスの秘書 山田達子さん 岩村智恵子さん


秘書の山田さん岩村さんはブライスの俳句・川柳の翻訳作業重要な協力者であり、大磯ブライス邸でお子さんと一緒にバッハの曲演奏に参加する友人でもあった。このおふたりあってのブライスの俳句・川柳の英訳の偉業、と私は推定している。

「回想のブライス」新木正之介・川島保良編集 印象社 昭和59年

 

3 ブライス家の音楽生活  バッハ J.S.Bach

 

長女春海さんと 私 大磯ブライス邸にて

 

春海さんにバッハ100曲を聞いてもらい ブライス家に流れていた曲を調査

春海さんの回答

記述回答「ブライスパパは Aria Jesu Praise to Thee be given (楽譜下掲) を特に好んだ」

この資料を見た竹野一雄教授(キリスト教文学会重鎮 所属教会のオルガン奏者 主著「C.S.ルイスの贈り物」岩波書店 私の博士課程指導教授)は「ブライスさんがどんな人かわかった 低音弱め・・」と言ってみえました。どうわかったのか、もっと聞いてみたくなりましたが、逝去されております。

 

ブライス家 演奏用楽譜 板紙で裏打ちされ ていねいな手書き。製作者は 手の器用な女性 ともおもわれるが しもぶくれの B の特徴から見て・・・
山田秘書所蔵の上掲の手書き楽譜 B とは異なる。

ブライスの講義用プリント

 B 文字はしもぶくれ もし上掲メヌエット板紙裏打ち楽譜がブライス自身の執筆制作であれば 家族合奏へのパパ ブライスのうちこみようが伝わってくる。

 

ブライスのバッハへのうちこみ方は半端なものではない。お小遣いの大部分はバッハの楽譜とチョコレートの購入にあてられていた。

4 ブライス 皇太子教育 詩の教科書 EASY POEMS

皇太子への御進講 再現の試み

テキスト EASY  POEMS THE HOKUSEIDO PRESS

川田基生 「R.H.ブライスキリスト教キリスト教文学会 研究発表資料

EASY POEMS を皇太子教育の教科書と教えてくださったのは荒井良雄教授である。私の博士号論文の学外審査員であった荒井教授は審査後 毎週お手紙をくださるようになり、たびたび雑談するようになった。ある日、私の持っていたEASY POEMS にびっくりされ 「それは皇太子への御進講のテキストだよ。ボクも持っていない。今度 (皇居に?)行くとき 貸してくれない?」初夏の阿佐ヶ谷の陽光だけ覚えています。

リズム、韻律重視。

「音読がじょうずにできない人は天国に行けません」大学では、ブライスは詩の講義でそう言ったとされていますが、皇太子に天国行を勧めたかは不明。

どんな詩が選ばれているのか?

R.L.Stevenson が多い。冒頭10篇のうち5篇がスチーブンソン。

詩の講義でのブライスの言葉に似た発想として、鈴木大拙全集第24巻の

「無垢の心なきものは天界に入るを得ず」スウェーデンボリの言葉。スウェーデンボリはポケットにヘブライ語旧約聖書をいれて放浪、今は 天国の入口付近で待っていてくれる という話を誰かから聞きましたが本当でしょうか?

 

5 ブライスさんの声 旺文社のレコード Voice of Blyth

やや厚めのテキスト小冊子

荒井良雄先生作成のCD

ブライスの声を収めたSPレコードは4枚ほど。箱入。国際融合文化学会でブライスについて研究発表のおり、最前列で聞いてみえた初老の紳士、自称「さとけん」佐藤健治教授からいただいた。荒井良雄教授と電話で会話中たまたまレコードのことを話たら、突然興奮され「で、レコードは何枚あるの? え 4枚も。ヴァイニング夫人の声も!発見だ」荒井先生はしかるべきところに収納したいとされ、レコードを持ち去られた。私にはテキストのコピーとCDが送られてきた。このCDは普通のプレーヤーで再生可能。聞いていただけます。

 

5月18日

学習院資料館に寄贈します。

 

学習院中等部の皇太子とヴァイニング夫人












6 大学での講義 プリントと試験問題 Lectures at the university Printouts and exam questions

     英文学 試験問題    

下記を 説明しなさい。(ときあかしなさい)1~4

下掲のプリントを判読 昭和34年大学院修士 リア王講義から と推定
テキストはページ数から 斉藤勇注訳「リア王」使用

 

講義プリント 1 ボッカチオ 「デカメロン」、 「ドン・キホーテ」

講義プリント 2 セネカ 小セネカの劇詩 ラテン語からの英訳

    後半 「灰闌記」元曲 

講義プリント 3 ユダヤ人 バビロン捕囚 旧約聖書の歌(推定)

         後半 アラビアンナイト(推定)

 

大学のプリントを見ると 世界中の詩の旋律を講義してみえます。

主著「禅と英文学」にも ドイツ語 イタリア語 スペイン語 漢文 古文などの引用。漢文、古文の翻訳は的確、優雅。「論語」の漢文の解釈などはあまりにも詩的、普通我々は論語をそう読まない などと思うことはあります。孔子はブライスさんの「論語」受容を笑って喜ぶことでしょう。